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「とりあえず最初に訊きてえことなんだけどよ」
「おう?」
「お前何で死んだの?死ぬ前日までピンピンしてそのへん跳ね回ってなかったっけ?」
「あー……まあ寿命じゃね?ふつーに。十二歳まで生きたんだから長生きな方だと思うし」
「まあ、やっぱそうだよな。ジジイだもんな」
「お前も十一歳だから充分ジジイだろ。若くねぇんだからもうちょっと痩せろ、その肉の乗り方はやべぇって」
「マジか」
「マジ」
ジジイとはいえ、自分達の世話をするのは子供たちか若い先生達のどちらかが基本である。そのせいかしゃべり方も人間達の年齢に影響しているのかもしれない。まあ精神的にどうであれジジイなのは確かで、体は追い付かなくてこうしてぽっくり行く羽目になったわけたが。
「俺もびっくりしたっつーの。いつもと同じように眠って起きたと思ったら、なんか自分の体透けてね!?ていうか寝床でもう一人の自分が死んでね!?みたいになってるし。朝飼育小屋に来たるおなちゃんが大泣きしてるし、で……」
そこまで言ったところで、言葉は不自然に途切れた。るおなちゃん。自分が死んだ時にわんわんと声を枯らして泣いてくれた、飼育係の女の子。毎朝誰より早く飼育小屋に来て掃除をしてくれ、餌をくれ、誰より丁寧に自分達の世話を焼いてくれた少女だった。
この小屋の中には死んだ俺を入れてウサギが二匹、モルモットが四匹いた。全員性格がまるで違うし、中には気難しい奴もいるのだ。
例えば、真っ白なモルモットのユキオ。非常にグルメなので、本当に新しくて綺麗な草しか食べない。
黒いモルモットのクロメとクロタの兄弟。こいつは脱走の常習犯で、飼育係がドアを開けるたび脱走チャレンジをして捕まるのが日課である。
最後の一匹、茶色のまだらのモルモットであり唯一メスであるチャナコは非常に気が強い。他の男達からすぐ餌をぶんどってしまうので、食事の時は他のメンバーから隔離する必要がある。
ウサギもウサギで、先述したようにウサギのまゆげは明らかに太りすぎのため、一人別にダイエットメニューを用意する必要があったりする。この個性的なメンバー全員の特徴を覚えて対処するのは、並大抵の努力ではないはずだった。それを全て記憶し、いつも完璧にやりこなしていたのが、大泣きしていたるおなちゃんというわけである。
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