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本当になにもかも違ったはずだったんだ。
あまつさえ、俺が涙した料理はおふくろの手作りでさえなかった。
おぞましく吐き気を催す悪意に包まれた、とんでもないものだったのだ。
それなのに……。
「どうして! どうして俺はっ! うわぁぁぁぁ! 俺はどうすればいいんだよぉ!」
悲嘆にくれて叫ぶ俺の頭を、がしりと何かが掴まれた。
強い力に髪の毛をひっぱられ、強引に顔をあげさせられる。
脇坂の細い腕が、信じられない力で俺の頭を無理やり引き上げていた。そして、今まで見たこともないような優し気な笑みを浮かべて甘い声で嬉しそうにいった。
「かわいそうな板山さん。そんなに泣かないで。安心してください、板山さん。私とお母様の契約は、まだあと一ヶ月残っていますから。その間、毎日あの美味しいハンバーグを焼いて差し上げますね。さあ、テーブルに行きましょう。お料理が、冷めてしまいますわ」
のしかかるような脇坂の巨大な影に、俺の身体と意識はゆっくりと飲み込まれていった。
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