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「あげちゃったほうがいいとか言ってるうちは唇にはしない。ただ、予約はしておいた」
「予約?」
「変な男が寄り付かないように加護をつけておいたから。昔つけたやつはだいぶ効力弱まってたみたいだし」
そう言いながら、リュウはあたしの前髪を整えるように撫でた。その表情がすごく柔らかくて、それがあたしに向けられたものだと思ったら、急に恥ずかしくなってきた。
「っていうか、昔つけたやつって何?」
「ひどいなあ、芽衣。大人になったら俺のお嫁さんになりたいって言ってたのに忘れちゃうなんて」
「え、あたしたち、子どもの頃に会ったことがあるの?」
ん、と短く返事をしたリュウは、あたしの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「あの頃の芽衣、可愛かったな」
「えー、待って、思い出したい。リュウもそのときは子どもだったの?」
「いや、俺は今と見た目はほとんど変わらないよ」
「それなら思い出しててもおかしくないのに。なんでー? なんか悔しい」
子どもの頃、神社に行ったときの記憶を必死に引っ張り出す。だけど、大抵あたしはひとりでお詣りしているだけ。リュウとそんな話をした思い出はどこにも見当たらなかった。
リュウの顔を横目で見ると、寂しそうな表情を浮かべていた。纏っていた輝きも鈍くなった気がして空を見上げると、いつの間にか雲が厚くなって、星々はその後ろに姿を消してしまっていた。
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