第1章

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つまらない映画を見ているように、淡々と時間が進んでいった。 とてつもなく長く感じた1日が、もう少しで終わろうとしている。 これで家に帰れると思ったが、そう上手くも行かなかった。 少女は彩絵に手を引かれてバスを降り、馴染みのない家の玄関をくぐった。 「今日は疲れただろう。彩絵。先に恋雪ちゃんと風呂に入ってきたらどうだ?」 伯父が優しい声で話しかける。 伯母は、何も言わずにキッチンへと向かった。 彩絵に連れられ、脱衣場へ入る。 髪を洗ってあげる。背中を流してあげる。 従姉の声を遠くに聞きながら、冷たいタイルを踏みしめる。 お泊まり会をしているような気分だった。 それも旅行に行くようなワクワクするお泊まり会ではなく、両親に用事が出来て仕方なく預けられた、そんなよそよそしい雰囲気。 「彩絵ちゃん」 「なあに?」 「お風呂終わったら、おうち帰れる?」 ああ。これも、してはいけない質問だったらしい。 鏡越しに見た彩絵はまた顔をしかめて、少女を抱きしめた。 直接的な体温が肌にじんわりと伝わってくる。 「帰らなくていいんだよ。恋雪ちゃんはここにいていいの。恋雪ちゃんは私の妹になるんだよ」 「でも、パパとママがおうちで待ってるかもしれないよ。今日はお泊まりしてくるって、パパとママに言ってないよ」 「言わなくていいの。言わなくても、ずっとここにいていいの……」 震えた従姉の声が、泣いているように聞こえた。 だからこの話はもうしてはいけないんだと思って、少女は小さく頷くに徹した。
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