私がアイドルであるために

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「はじめましてっ、皆の未来を照らす、目映いピンクの光になりたいなっ、眉村梓ですっ、あずぴょんって呼んでね!」 「わあああああ!」  そこに居たのは三人の観客だけで。それが、太郎、さゆりん、舞ちゃん。私の、大切なファン。SNSではあんなにいろんな人がコメントをくれたのに、現場に来てくれるのは結局そのメンバーで。それから徐々に増えたり減ったりを繰り返したけれど、最初から最後までそばにいてくれたのは、彼らだった。  初めての物販で、チェキを撮ることになってなれない私はそわそわしていた。 「あのっ、SNSずっと見てました。最高にかわいいですね! ずっとずっと会いたかったんです!」  そう、三人が私を囲んで言ってくれた。その途端、私は思わず泣いてしまった。私が、かわいい。会いたかったなんて、言ってもらえるなんて。  ぽっちゃり気味の小柄な太郎。モデルのような美人のさゆりん。華奢でおとなしい内気な舞ちゃん。毎日のようにコメントをくれる彼らに、私はお金以上のものをもらっていった。小さな箱もなかなか埋められない私だけど、社長はしばらくは活動を許してくれることになった。毎日が、濃くて。些細なファンコールが活力になった。
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