私がアイドルであるために

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 だけど。相手は意外にも近くに居たのだ。 「……すみません、あずぴょん! あたしのおばあちゃんを保護してくれてありがとうございます!」  泣きながら、私を見るさゆりん。垢抜けたさゆりんを見ていれば、元引きこもりだとは思えなくて。ああ、きっと私に合うために頑張ってオシャレを学んだのかなと思うと私も泣きそうになった。 「あの、おばあちゃんからいろいろ聞きました? あずぴょん」 「うん、私のために勇気を出してくれてありがとうね、さゆりん。私も頑張るよ」 そう言って私は涙を拭いてその日は精一杯ステージに上がった。  気がつけば、私は学校にも毎日通うようになっていった。  皆が堂々と推せる女の子でいたかった。そのためには、勉強も運動も頑張って、素敵だと思ってもらいたかった。胸を張って押せる女の子でいたかった。だから。個室のトイレで吐いても、素知らぬ顔で笑って授業をこらえた。
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