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★☆
そのとき僕たちは、
世界でまるでふたりきりのような、そんな特別な繋がりのなかにいた。
「じゃあ、こうしよう」
あるとき《彼女》が言った。
「ふたりで一緒に、プラネタリウムに行くの。来年も、さ来年も」
「いいね」
僕は心から賛同した。
《彼女》の声は、小さくかすれていて、語尾がわずかに震える。
耳をすませていないと、聞き漏らしてしまいそうで。
僕は《彼女》が放つ一語一語を、ひと言も聞き逃すまいと、耳をかたむけた。
「一緒に行って、消えない約束をしよう」
いつまでもずっと、そばにいられるように。
僕らは笑ってしまうくらい子供だったけど、その気持ちだけは本物だった。
ずっと彼女の隣に佇んでいたかった。
かけがえのない存在の片割れとして。
天の川をはさんで逢瀬を重ねる、彦星と織姫の星の光のように。
約束を交わすことで、この関係を終わらない永遠に閉じ込めてしまいたかった。
すべてを失う前、鮮やかで遠い夏の残照のなか、
――喪失に切り裂かれた日々が、その後始まるとも知らずに。
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