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涙の行方
はらはらと落ちる涙は、まるで散りゆく桜の花びらのようで。
見ているだけで胸が締め付けられる。
濡れた頬に触れようと手を伸ばす。
指先で温かな雫を払う。
僕を捕えたのは驚いた瞳。
気まずさからか頬を紅潮させる君。
泣き腫らしていたせいで赤い目元。
――僕なら、泣かせないのに。
心に沸き上がった激情。
頬に触れていた指を動かし、柔らかな唇をなぞる。
驚いた彼女の顔を見て、心臓が跳ねた。
――ああ、これが恋なのか。
はじめての感情に戸惑う僕。
目が合ったまま――見つめ合っていると、彼女の頬も熱を持ち始めた。
気恥ずかしさから目を反らそうとする彼女の頬を両手で包み込み、固定する。
逃げられないと悟った彼女は目を閉じた。
瞳を遮った瞼が腫れて熱を持っているのが触れなくてもわかる。
閉じられた瞼にそっと唇を落としていく。
「ねえ、僕を好きになって」
大切にするから。
泣かせたりしないから。
頷いてくれるまで瞼、そして頬に口付けを落とした。
恥ずかしさに耐えきれなくなった彼女が頷くのを確認して、唇を重ねる。
「好きだよ」
気持ちを言葉にしてから、もう一度キスをした。
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