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「ここにきてから顔色が悪くなる一方だな。眠りも浅いみたいだし。熱はないんだろう? ほかに不調は?」
「いえ、大丈夫です。ちょっと気が滅入っているだけなので」
トウカはてんこ盛りのおひたしに箸をつける。
――おひたし、さすがに飽きてきたな。
食卓には三種類の朝餉が並ぶ。
ウツギの食べるご飯、みそ汁、卵焼き、おひたし。ポチが食べる少量のご飯、卵焼き。そしてトウカが食べる山菜のおひたし。
トウカはこの家にきてから、水とおひたし以外を食べていない。というのも、
「べつの世のものを食べてしまうとその世から出られなくなる、という噂がある。人の世に帰りたいなら、ここで食事はとらない方がいいだろう」
ウツギが最初の朝にそう言ったからだ。しかしそのあとおひたしが盛られた皿を突き出して、
「あやかしならば多少食事をとらずとも問題はないが、人はそういうわけにもいかないはずだ。これはあやかしの世の力が及びにくい場所でとれた山菜だから、食べるのならばこれにしておけ」
と、そう言ったから、トウカは三食山菜のおひたし生活を送っている。
一度だけ天ぷらが出たが、それ以外はずっとおひたしだ。どうやらウツギの好物らしい。放っておくと延々とおひたしが出続ける。泊めてもらっている身のためなにも言えないが、さすがに飽きてきて箸の進みも遅い。
「鏡に姿は映ったのか? 寝ぐせが直っている」
「まあ」
バツが悪くて髪を撫でつけるトウカを見ながら、ウツギはみそ汁をすすった。
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