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そこに、のんびりとした声が加わった。
「感動の再会だねえ。おめでとう。まったくウツギくんってば、ずーっといじいじしているから、そろそろ飽きてきたところだったんだ。よかったよかった。あ、お帰り、トウカちゃん」
「ああ――、シラバミさん、いたんですか」
鳥居の陰に隠れるようにして立っていたシラバミが顔をのぞかせた。なぜかその腕にはアサヒとカグノが拘束されていて、それぞれの口を手でふさがれている。
「何やってるんですか」
「感動の再開を邪魔する無粋な子供たちのお世話」
シラバミはくすくす笑う。はい、と手を離すとアサヒとカグノは大きく息を吸った。
「トウカ! 大丈夫だったか!」
「ヨシノー! 寂しかったの!」
「うわっ」
アサヒはトウカに突進し、カグノはヨシノに抱きついた。ほらみろとシラバミが肩を竦める。ヨシノとカグノは手を取り合って飛び跳ねた。
「だ、大丈夫だよアサヒ。ごめんね、心配かけたみたいで」
「いや、無事ならいいんだ。突然いなくなるからびっくりした。カグノがさ、ヨシノがあやかしの世からいなくなったんだって騒いでいて。それで、トウカやポチもいないから、多分トウカたちは人の世に行ったんだろうってことにはなっていたんだけど」
アサヒはちらりとウツギを見た。
「ウツギは、トウカは帰ってこなくていいんだって言っていたけど、俺はトウカはこっちに戻ってくるだろうなって思ってた。だから枷のまじない、完成させておいたよ」
「アサヒ一人で?」
「めちゃくちゃ頑張ったんだからな。あとはトウカがまじないに力を注ぐだけだ」
「すごい。ありがとう、アサヒ」
アサヒは恥ずかしそうに笑った。
「まあ、もともとトウカと一緒に大枠は作っていたから、俺がしたことなんて大したもんじゃないよ。でも、これで準備は整った。トウカの方はどう? できそう?」
トウカはウツギを見た。ウツギもトウカを見て、頷きあう。
「うん。大丈夫。そのために、私は帰ってきたんだから」
すぐにでもいけるよ、というと「その前にヨシノとカグノに頑張ってもらわなきゃな」とアサヒは笑った。
(第7話「進め」 了)
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