230人が本棚に入れています
本棚に追加
ウツギは再度ため息をついた。
「トウカ、バミさんはこれでも俺より長く生きているし、色々知識も持っているから、頼りにはなるんだ。こんな性格だけど。交流をもって損もあるが得もある」
「お褒めの言葉ありがとう、ウツギくん」
シラバミは縁側に寝転がってふふっと笑った。菫色の髪が散らばるのを気にもとめていないらしい。ぶらぶらと足を泳がせた。
「今日はね、本当に様子を見に来ただけなんだ。あやかしの世に迷い込んでしまった女の子はどんな子かしらーって。でも、トウカちゃん、君は駄目だね。期待外れだ」
「はい――?」
「駄目駄目だよ。人の世に戻りたいって言うのに、この家から出られないなんて。本当に人の世に帰りたいのか疑ってしまうね。帰りたいなら、苦手だろうと怖かろうと、もっと自分から動かないといけないのではないかな。今のところ、ぜーんぶウツギくん任せにしているんだろう?」
「それは」
「ウツギくんはとってもお人好しでお節介だから甘えてしまうのも分かるけど、今のままじゃあ駄目だよね。自分のことは自分でやらないと。子どもじゃないんだからさ」
ウツギは白い髪を無造作にかき混ぜた。
「あんたいつから縁の下にいたんだ」
「うーん、最初から」
二人のやり取りを見ながらトウカは黙り込む。シラバミの態度はめちゃくちゃだが、言っていることは真っ当だ。傷ついたし腹も立ったが、言い返すことはできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!