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「トウカ」
それまで黙って成り行きを見守っていたウツギが震える声を上げた。その瞳には迷いや不安が浮かんでいるように見えた。だからトウカは、ウツギを安心させるように微笑んでみせる。もうトウカには迷いがなかった。
「大丈夫だよ。タンゲツのこと、取り戻すから。それで、タンゲツをここに残して、私だけおばあちゃんのところに帰るよ。そうすれば、ウツギはもう一人にはならないでしょう。タンゲツも、きっとウツギと一緒にいたいだろうし」
本当はトウカだってタンゲツやウツギと別れることは寂しい。思い出してしまったのだから、離れがたい。だが、きっとこれが最善だ。ウツギを一人にすることはできないが、祖母を捨てることもできないのだから。
「私、人の世に帰る手立てを探すのはしばらく休むよ。タンゲツのことが解決したら、また再開する。だから、そのときはウツギも手伝ってね」
ウツギは目を伏せた。ああ、と小さな声がする。トウカは微笑んだ。
――ウツギのことは、助けてあげなきゃ。絶対に。
そう思っていると、「トウカ」と、ウツギに呼ばれる。
「うん?」
「――ありがとう」
小さなその声に、トウカは頷いた。
(第2話「望むものは」 了)
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