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僕は記号だから。
君の目には入らないよ。
入学した高校のクラスで久しぶりに再会した幼なじみの格はいった。
僕は今、君に会えてるし、君と話せているよ。
僕は彼に反論する。
それは君が僕と共通の幼なじみと言う記号を持ち、僕と相互に個体認識しているからだ。
格はすましたようにいう。
特別教室に移動するクラスメイト達は廊下の真ん中を陣取ってる僕たちを避けるように通過していく。
まるで壁を避けていくかのように。
ほら、僕の言ったとおりでしょう。彼らに僕は見えていない。
担任は?担任は出席を取っている。
僕らは生徒Aという記号なんだよ。数が一致しない時に初めて発動するんだ。
駅に行けば僕は乗客Kで、病院に行けば患者Cだ。家に帰れば子どもGで、兄弟Bだ。
僕は格をAとかBとかにしないよ。格は格だ。
僕の言葉に嬉しそうに格は微笑んだ。
つりぎみの一重がより細くなる。
僕は格と幼なじみ、クラスメイト以外にも格のいう記号を増やしたいと思ってる、格にそう伝えると、
それは例えばどんな?と格が僕にたずねてきた。
友だちとか、親友とか。
うわぁ偽善くさいね。
記号は相互に認識しないと成立しないんだ。
勝手に思うのは自由だけどね。
格はきれいに整った顔で笑う。
じゃあ、恋人は。
格の嘲りを含んだもの言いにカチンとした僕はとっさに浮かんだものを吐き捨てた。
恋人。いいねぇ。
格がニヤニヤしている。
肉体を通じてA感覚を共有する。
それは単なる記憶Dの共有よりも強固だよね。
でも、それにはボトルネックがある。
君は僕を抱けるか? 僕に抱かれることが出来るか?
僕らは同性だ。君はそこを越えられるのか?
とり澄ました格が裸になり快楽で乱れいくさまを想像する。
それは僕にとって煽情的に思えた。
僕は格に抱かれるのは分からない。でも、格を抱くのならできる気がした。
僕は格のほうへ足をすすめると、格は一歩うしろへあとずさった。
僕はすばやく格の腕をつかみ腕の中へひき寄せると、格のあごをつかみ顔を上にむかせた。
格なら抱けるよ、そう言って格の唇をふさいだ。
僕ら生徒Aと生徒Bは勝手に学校からぬけだした。
記号なのは都合がよかった。
僕らは手をとりあって、僕の家にむかった。
男同士で手をつないでも僕らは所詮通行人Xで、男子高生Jとして風景と一体化する。
格を脱がす。
裸になって抱きあう。
皮膚がふれあう感じが肌感覚Fだ。
僕らはこれを共有する。
格のうなじに口づける。
格の胸の飾りを口に含む。
格にはBの感覚。僕にはEの感覚。
格はBの感覚でふるえ、白い肌を桜色にそめていた。
僕は格のその状態を視覚情報Rで認識してからだを熱くする。
格の性器が僕の腹にあたる。
僕の性器も格の腹にあたる。
体験のない僕はこれ以上どうしたらいいのか、わからなかった。
性情報Qの欠落だ。
いっしょにしごくと気持ちがいいって聞いたことがある。
僕の戸惑いがつたわっていたのか格が言う。情報の共有だ。
僕は戸棚からベビーオイルを取りだして二つの性器にぬりたくった。
格の性器に僕の性器が触れる。
触れた部分が熱くてやけどしそうだ。
先端をあわせ、ゆっくりとしごいていく。
先端がこすれあうたびに腰奥まで電気がはしる。
息がはやまり、体温が上昇する。
格をみると汗で前髪がはりつき、顔はあからみ、目はうるんでいた。
口をあわせ、舌をからめあった。くちゅくちゅと水音が響く。
触れあう刺激としごく刺激。
僕らは膨張のすえ、一緒にはじけた。
視覚、聴覚、触感、嗅覚A〜Zのたくさんの情報を僕らは共有した。
恋人Nくらいにはなれたかと格に問うと、
まだ、クラスメイト、幼なじみで、追加するならセクフレじゃないかと、気だるげな様子でいう。
格の言葉は今の自分には厳しかった。
格に問いかける。
記号は進化するのかと。
Of course!
その言葉を発する格は嬉しそうだった。
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