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一人で息をついてソファに座った時や、湯船に浸かって寛いだ時や、ふとした瞬間にしみじみと全身が深呼吸をするテンポで幸せを噛み締める。
どこもかしこも目をやる場所全てに、僕とあさひの時間が降り積もっていて、何処にいても何をしていても僕を赤い糸で雁字搦めにする幸せに、息が止まりそうになる。
それは心地よい束縛で、一人にはもうなれないのだ、という諦めに似た覚悟でもあり、同じ息が詰まるなら噎せ返る花びらに殺されるより、手で触れて温もりのある「愛情」とかいう傍若無人で強欲で凶暴なカイブツに埋もれてしまう方が余程いい。僕もあさひも散々振り回されてきたけれど、今では大分このカイブツを飼い慣らせているのではないだろうか。
時にはお互いに噛みついて自家撞着を起こしたり、二人とも殴りつけられて凹んだり、求め過ぎたり与え過ぎたりしてバランスを欠いたりしていても、変わらないこともある。
毎日続いていく「日常」を二人で過ごすこと。
逃げる時も戦う時も、二人であること。
「ふたり」というひとつの大きな力が今、僕たちの手の中にあって、それを生かすも殺すも僕たち次第で、相手の人生に責任を持つという決意は信じられないくらい重いけれど、信じる必要がないくらい当たり前のものに出来たらいい。
振り返るといつも君がいる。どうしてこんな簡単なことが出来なかったんだと今では不思議になるほど、あさひの愛は僕に馴染み、僕の愛は尽きることなくあさひに注がれている。
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