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ああ、やっぱり。
世界中の誰よりも愛しい人がそこにいる。
それだけで、世界は輝いて見えた。
もう、充分だ。
幸せな人生だったなあ。
意識がふわふわとアオイの元に飛ぶ。当然、目の前の透けている僕には気づかないけれど。
久し振りに間近に見たアオイは、少し窶れているようだった。大丈夫だろうか。またどこか具合でも悪いのか。もう僕は傍にいないんだから、自分で自分を労らなきゃ駄目だよ。毎日ご飯を食べて、よく眠って、仕事はまあそこそこでいいから、よく笑って、遊んで、好きなことして、ちょっとでもいいから野菜食べろよ。
そしていつか大切な誰かに出逢ったら、
毎日好きだって伝えて、幸せな家庭を築いて、
泣いて笑って精一杯生きて
僕の分まで幸せになれよ。
世界中の誰よりも幸せに生きてくれ。
透明な指先で頬に触れる。
最期に、お別れが出来て良かった。
いい、人生だった。
神様、ちょっとでいいから目を瞑っていて。
余所見をしてくれるだけでいい。
その間に済ますから、赦してね。
そう心の中で祈りながら、
口唇を重ねて
愛の言葉を
あなたに
さよなら、
"あさひ"
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