白銀の百合

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「おはよ」 眩しさに目を開けると、息がかかる近さで微笑むあさひ。眼差しに凝縮された愛しさに包まれて、ふふっとつられて笑う僕に、キスの雨が降る。手を繋ぎ合って、頬を擦り寄せて、猫みたいにじゃれ合って、なんて幸せ。 恥ずかしくて照れくさくて、それでも溢れる愛しさを伝えたくて、口唇の形がお互いの名前を描く度に、思わず目が吸い寄せられてしまう。そして、 ちゅ。 愛しい人の吐息ごと飲み込んで塞いでしまおう。目眩がするほどの幸せ。 「ねえ、偲。引っ越しの話だけどさ」 「んー」 朝食を作る僕の横で、丁寧にコーヒーを淹れる大きな手。頭ひとつ分も違うあさひの幅広な肩がゆっくりと動くのを横目で追いかける。 「その前にさ、ご挨拶に行かせて」 …どこに、なんて聞くのも野暮だ。でも、付き合ったばかりでまだ何も始まってすらいないのに。これから何かが起きて、喧嘩して、嫌になったり、その、絶対厭だけど、もしかしたら万が一、別れたりするかもしれないのに。 思わず手が止まった僕の逡巡を見透かすように、あさひの手も止まり、背中にあたたかい感触と正面に回される長い腕。すっぽりと包み込まれて、耳元に置かれる囁き。 「偲は、僕の、運命の人なんだよ」 僕にも、自分にも言い聞かせるように、ゆっくりと染み込んでくる言葉。 「いつか上手くいかなくなる日が来ても、それでも僕は離さないよ。偲のこと、独りにしない。もう諦めない。そう、決めたんだ」 重くてごめん。そう、苦笑いする頬に頭を擦りつけてやると嬉しそうに笑う。 「死ぬほど好きなんだ。愛してる。だから、一生一緒にいたい。そのための、覚悟なんだよ。僕に偲を守らせて」 もし誰に認められなくても堂々と、日の当たる場所で。
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