冬子と夏子

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冬子と夏子

「大きくなっていませんね」 二週間様子を見てみましょう。 長い長い二週間をキリキリ痛む体を抱きしめ泣きながら過ごした。 そう人生三回目の手術。 お腹が痛い。 出血が止まらない。 「流産ですね。精神的な負担を減らすためにも、すぐに、手術をすることを勧めます」 「まぁ、ダメだと思いますが、手術をしないというのもあなたの選択です」 「ご家族は? 来れないんですか?」 その夜、一人で、暗い病室のベッドの横に置かれた簡易トイレで、大量出血をした。 結局、翌朝、ソウハ手術を受けた。 たまたま職場帰りの仲間が立ち寄ってくれた。 売店でホカロンと携帯用の電池を買ってきてもらった。 隣の病床では、家族がお見舞いに来ていた。 ベッドにいる女性は泣きながら、 嬉しそうに、 ありがとうございます、 ありがとうございます、 と何度も医者に感謝していた。 「……双子ですからねぇ、良かったですね」 医者も嬉しそうだった。 なんだろう? この差は? 幸せと不幸せは紙一つ 向こう側とこっち側 まるで私の人生を象徴してた そこ(婦人科)には「配慮」というものはなかった。 ……を堪える。 麻酔が切れた夕方、一人で退院した。 最寄り駅のコンビニで食料を買い、 一人暮らしのアパートに帰って休んだ。 やっと……
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