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都合の良い家族
「カウンセリングの先生がな、
なんで、そんなに妹に気を使うんですか? 家族ですよね?
って言われてん」
にこやかに姉は言った。
妹はこの姉に逆らえない。
一言でも反論したら、十倍にも二十倍にもなって、口撃されるからだ。
しかも、昔の話を持ち出して、自分の土俵に場所を移す。
逆らえない。
それは一家の大黒柱がいなくなったときから始まった。
「お前が一番しっかりしてる、家族を頼むぞ」
正義感と義務感に従い、妹の帰宅時間は午後6時と決めた。
遅れたら、一時間どころではない説教タイムが始まる。
そして、それからは逃げることは許されない。
両手で顔を姉に向けさせられる。
「こっちちゃんと見いや!目を反らすな」
あれをするな、これをするな、
躾ということで時には殴られ、蹴られた。
その日々は姉に一言たりとも言い返すことができない妹を作る。
姉と対峙すると、思うだけで息が詰まる。手が冷たくなる。
今まで、その妹とその母は電話一本で呼び出され、幼稚園へ迎えに行く。
病院へ連れて行く。
いなくなった、といっては
あちこち探し回る、
電話一本、そんなことは度々あった。
あれして、これして、
命令は続く。
そうして、時は経ち
その母に痴呆症が現れる。
[LINE]
姉:おはようっ!😆!
朝から、ごめんな、お母さんが心配やから、実家にいってくれると助かるんやど、頼めるかな?
妹:ごめん、今行かれへん。
飼ってる犬が発作おこしてて目離されへん。落ち着いたら行くわ。
姉:もう、ええわ!!
姉:私ばっかりお母さんの相手してるのは不公平や!
そして、その妹は返せない思いをつぶやく。
付き合ってる男とうまく言ってるときには、実家に帰らんと、
うまく行かんようになって、
実家でお母さんと顔合わせるようになって
まだ、1ヶ月やないか!
お姉ちゃんがおらん間、
もう何十年もお母さんの世話してきたのは私や……
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