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「匡介さんは最初からあの事件が起こる事を予想していた……?」
高校の頃にはほとんど関わりも無い様な状態になっていたのに、なぜ匡介さんはそんな事まで気付けたのだろう?
それに、何故こんな方法で私を守ろうとしたり助けてくれたりしたの?
「そうだろうね、まったくあの男は邪魔な存在でしかない。妙に鋭くてあの時もやっぱりアイツが邪魔してくれた。ずっと自分の気持ちも言えないような臆病者のくせに……」
「匡介さんの気持ち、それってどういう……?」
私の知っている匡介さんは臆病者なんかじゃない、むしろ大胆で強引な面もあるくらいなのにどうしてそんな言い方をするのか。
「くくく、杏凛ちゃんはまだ気付かないままなんだ。このまま君を俺のものにしたら、鏡谷 匡介はどんなに悔しがるだろう? ねえ、凄く楽しいと思わない?」
ゾッとするような笑い声に、身体の上から下まで鳥肌が立つような気がした。
私が郁人君とどうにかなるなんてとても考えられない、それも匡介さんへの当てつけのためにだなんて。
「馬鹿なこと言わないで! 私は匡介さんの妻なの、郁人君のものになんてならないわ」
「そう強気でいられるのはいつ迄だろうね? 杏凛ちゃんのそんな所も魅力的だったのに、あの男のものになんてなるから……!」
さっきまでの余裕の表情が、私を憎むようなものに変わる。怯えても逃げる事など出来ず、彼の手が私の肩を強くつかんだ。
「いっ……!」
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