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「それが、監禁だったと……?」
正直、まだ父の言っていることが信じられずにいた。私の知っている郁人君はそんな大胆な事を出来るような人じゃない、ちょっとした事でも周りに気を遣うようなお兄ちゃんで……
それにあの頃の私だって郁人君に大人しく監禁されるような女子高生ではなかったはず。なのに、どうして?
「あの雨の日に郁人君は偶然を装ってお前を家まで送ると言って彼の車に乗せたそうだ。幼馴染のような彼に心許しているお前は何も疑わず、郁人君が差し出した飲み物に口をつけ、そして――――」
続く言葉は何となく想像できる、きっと郁人君が私にくれた飲み物に睡眠薬のような薬が入れられていたのだろう。でなければ そんなに簡単に人を監禁なんて出来るはずがないから。
……つまり郁人君は最初から私を攫って閉じ込めてしまうつもりだった、と。
「そう、でもそれは私が迂闊だったのも問題だわ。郁人君の気持ちも何も気づかないで、ただ優しいお兄ちゃんだと信じて疑わなかったんだもの」
「違う! 杏凛が悪い事などない、全て私たちが彼の気持ちを有耶無耶にしていたことが原因だ」
父と母はずっと自分たちをそうやって責めてきたのかもしれない、だけどそれも何か違う気がして……
もし私の好意を持っていたとしても、大人しい郁人君がそんな事をしでかすなんて誰が想像出来ただろう? そのことで苦しんでいる両親もこの出来事の被害者にしか見えない。
「二人は悪くないわ。それで……郁人君に監禁された私はそれからどうなったの?」
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