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確かに私はあの頃、あるブレスレットをとても大切にしていた。あれは誰からのプレゼントだったか思い出せないけれど、私の為のお守りなんだってそう言われた気がする。
でも、あの日……郁人君があのブレスレットに触れようとしたから。
「郁人君を引っ叩いたのよね、あの時の私は」
「そう、流石に腹が立ったからあのブレスレット引き千切ってあげたけど」
あの時は床に散らばった天然石は全部拾いきれずに、そのまま腕を掴まれ郁人君に椅子に座らされ縛られた。
じゃあ、それからは……?
「いたっ、頭が痛いの……」
思い出そうとすれば頭が酷く痛む、それでも必要な事なんだって必死で過去と向き合おうとする。
こんな時に限って何故か匡介さんの少し不機嫌そうな顔が浮かんだ。あんなに心配してくれたのに、私は言う事を聞かないで結局……
「もしかしてまた鏡谷 匡介が迎えに来てくれるって期待してない? 杏凛ちゃんは本当にあの男を信頼しちゃってるのかな。アイツは新婚初日に妻を置いて外泊するような男なのに?」
「郁人君、どうして貴方がそれを……?」
私と匡介さん、そして寧々しか知らない事をどうしてこの人が知っているの? 今でも私が匡介さんを問い詰められないでいる事、それをまるで全部知っているかのように。
「二人の特別な夜を他の女と一緒に居たのかもしれない、そんな鏡谷 匡介を君は本当に信じてもいいの?」
「……そんな」
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