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「杏凛ちゃんは昔からそうだよね、自分の目で見て聞くまで決して信じない。そういうとこも嫌いじゃないけれど、今は少し腹が立つね」
傍に来た郁人君に少し強めに押されて、立ち上がりかけた身体を椅子に戻される。どうせ逃げることは出来ないだろうから、立っていても座っていてもそう変わらない。
片手を掴まれ、その手首に天然石のブレスレットを付けられた。ところどころ石の欠けたそのブレスレットは見覚えがあって……
「これって、もしかして?」
「思い出した? さすがにもうボロボロだけど大事にとっておいてあげたよ、君の大切にしていたお守り」
そうだ、このブレスレットが間違いなくあの日に無くした私のお守り。ずっと忘れてしまっていたけれど、これを渡してくれたのは……
「石に紛れていた発信機は処分させてもらったけどね? あの男は見た目のわりに隙が無いから、以前はまんまとやられたけれど」
「発信機? じゃあやっぱりこのブレスレットは匡介さんが……」
高校三年になってすぐの誕生日、十八歳は特別だからお守りだと匡介さんがわざわざ渡しに来てくれた。意味が分からなかったけれど、意外にも私好みのブレスレットだったから普段から持ち歩いてて。
あの日もいつものように鞄に入れていたそれを手首につけて校門を過ぎたところで、郁人君から声をかけられて……
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