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「すまない、二人とも!」
部屋へと入ってきた二人にそう言うと匡介さんはその場から一瞬でここまで走って来たかと思うと、身体を翻しその長い脚を振り上げる。次の瞬間には郁人君が窓の傍から横へと吹き飛ばされていた。
たった数秒の出来事のはずなのに、それはまるでスローモーションのようにも感じてしまう。そんな目のまえで起きた変化についていけずボーっとしていると……
「杏凛!」
その場で動けないままでいた私を匡介さんが起き上がらせて、強く抱きしめてくれる。その広い胸がどれだけ安心できる場所なのかを、私は初めて知った。
泣いたりしない、そう思って今まで耐えていたのに……匡介さんの腕に包まれてしまえば、もう我慢出来なくて。
「匡介さんなら、絶対来てくれるって……信じいてました」
「遅くなってすまなかった!」
匡介さんが誤る必要なんてない、私がもっと気を付けてさえいればこんな迷惑をかける事も無かった。それなのに、匡介さんは私を強く抱きしめて何度も謝ってくる。
こうして郁人君から助けに来てくれた、匡介さんは契約妻の私でもこんなに大切にしてくれている。今の自分が心から信じられるのはこの人の温かさだけ、そう思って目を閉じていると……
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