契約結婚とあの日の事実は

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「いつからそんな……だっておかしいわ、私達の結婚は祖父の会社を立て直すためにっ!」  でもそれは匡介(きょうすけ)さんに何のメリットがある? ずっと疑問だった、彼がどうして私の祖父のためにそこまでしてくれているのかが。つまり、ということは…… 「あれは杏凛(あんり)を納得させるための建前に過ぎない。きみの祖父は借金などしてないし、彼も納得して話を合わせてくれている」 「おじい様も? そんな、まさか……」  とても信じられない話だった、郁人(いくと)君から攫われた後でなければきっと自分が揶揄われてるのだと思ったに違いない。両親も祖父も真面目な性格で私に嘘をつくなんて思えないような人たちだから。  それでも匡介さんが私を騙していないと分かるのは、彼の眼差しが今まで以上に真っ直ぐ自分に向けられているから。 「橋茂(はししげ) 郁人が君に目を付けていると気付いた時には、彼の行動はもう少しおかしかった。だから俺は君に理由を付けて発信機の付いたブレスレットを渡したんだ」 「あの時のブレスレットは、匡介さんが……」  そう、いつもの集まりで珍しく匡介さんが私に近づいてきたと思ったらいきなり渡された紙袋。オシャレでも可愛くもない地味なそれに入っていたのが、あのブレスレットだった。  でも私はその天然石のブレスレットがとても気に入って、いつもつけて出かけてた。 「杏凛の好みを聞いて作ったアクセサリーだった。それでも君がつけてくれるかどうかは分からなかったが」  でも私はそれを気に入り毎日つけた、あの事件の日も。だからこそ匡介さんはあの日、それを頼りに私を助けに来てくれたに違いない。  ……それじゃあ匡介さんが二度も私を助けてくれた、その理由は何?
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