契約結婚とあの日の事実は

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「……」  私が覚悟を決めてそう言うと、匡介(きょうすけ)さんは黙ったまま。ただ目を見開いてじっと私を見つめていた、信じられないという表情で。  そんなに意外だったのだろうか? 私が匡介さんに興味を持つことや、もっとお互いの事を分かりあいたいと思う事が。本当の夫婦だったら当たり前の事なのに……  やっぱり私たちは契約関係でしかない、少なくとも匡介さんはそうだったのだと思い知らされたような気がして落ち込みそうになる。でも、ここで諦めたらダメなんだわ。 「もっと匡介さんの事を教えて欲しい、私の事も知って欲しい。三年間なんて期限を私は望んでないのよ」 「杏凛(あんり)……すまない、俺は……」  謝りかけた匡介さんに私は焦った、このまま彼に言葉を続けさせたら聞きたくない事を言われてしまう気がしたから。もし今の状態で匡介さんに私の気持ちを拒まれたら、流石に冷静ではいられそうにない。 「やっぱり私は先に休みます。疲れちゃってるのかも、変な事を言ってごめんなさい」 「杏凛、もう少し俺の話を……っ」 「明日、落ち着いてから匡介さんの話は聞くわ。おやすみなさい」  私を引き止めようとする匡介さんをその場に残して、私は自分の部屋のドアを閉める。そのままベッドに倒れ込んで目を閉じれば、あっという間に深い眠りについていた。
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