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契約結婚を俺とすればいい
「杏凛、俺と契約結婚をしなさい。そうすれば君を助けてやる事も出来る」
久しぶりに会った彼は、私への挨拶も無しに開口一番そう言った。
幼い頃から愛想の良い人ではないことくらい知っている、高すぎる身長とその強面な顔の所為で余計にそう見えるのだけど。それでもこの人が見た目ほど怖い人ではないのはずっと前から分かってる。
……だからと言って、この人の事が苦手な事には変わりなかったのだけれど。
私が現在とても困っているのは間違いないことで、それをお互いの家同士で長い付き合いのある彼が知っていても何もおかしい事ではなかった。
今一番おかしいのは目の前にいるこの男性、鏡谷 匡介の発言なのだけど。
「貴方、今なんて言ったの……?」
匡介さんの言葉が全く理解出来ない。私が匡介さんと結婚、いったい何のために?私の頭の中は疑問だらけだというのに、目の前の彼は顔色一つ変えることは無い。
いいえ、それどころか眉一つ動いていないのではないかしら?
「三年間だけでいい、その間に君の祖父の会社を立て直してみせるから」
そうね、匡介さんの素晴らしい仕事ぶりは私の耳にも届いているわ。きっと貴方なら私の祖父の会社だって立て直す事も出来るでしょう。
でもね……
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