126人が本棚に入れています
本棚に追加
/404ページ
「じいちゃん。今日は打ち込みの練習をさせてくれるって言ったじゃないか」
「四分の一の刻も打ち込みさせてやったのに、致命打を与えられなかったギルが悪い。時間がかかりすぎじゃ」
「そんな時間制限なんて聞いてないよ」
そよぐ風に煽られながら頬を膨らませて睨むも、高笑いで流されてしまう。じいちゃんはすぐ本気になるからずるい、そう口を尖らせたその時だった。
「カーミルおどき。次はアタシだよ」
声がした瞬間、じいちゃんが一歩左に避ける。すると、深緑の道着に胸当てをした武術家のばあちゃんが飛び込んでくる姿を目にした。
うわっ――と体をねじり、襲ってきた正拳突きを交わす。
「アンジェ。ワシはまだ話の途中だぞ」
と、僕が落とした剣を拾いながら愚痴る。
「フン! いつまでも待たせるんじゃないよ」
最近、目じりの皺が気になっているばあちゃんがこっちを見据え、ニヤリと笑みを浮かべた。全身からは、もうすぐ六十歳になるとは思えないほどに覇気が漲っている。
編み込んだ長い水色の髪を手で振り払い、腰を落として身構えるばあちゃん。手のひらをクイクイと振って挑発してくる。余裕たっぷりだけど、目つきは容赦なく本気だともの語っている。手加減なしってことだ。
最初のコメントを投稿しよう!