1話 よくある 物語の始まり

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 大きく息を吸って呼吸を整えると、足を肩幅に開き、両手の拳を握り、こちらも身構えた。  踵を上げ重心を少し前へ傾ける。じりじりと間合いを詰める。呼吸は乱さないように小刻みに、視線はばあちゃんの顔から逸らさないように、神経はばあちゃんの動きを感じるように集中する。  じりじりと詰めていた間合いが自分の飛び込む射程距離に入ったその刹那、息を吸い込み、全身に力を籠め、力一杯に地を蹴った。  拳と蹴りを次々に全力で叩きこむ。だけど、すべて払いのけられ、躱されていく。そのたびに、地を蹴ってつけた勢いと流れが少しずつ弱まっていく。  このままではまずい。掌手を繰り出し、ばあちゃんが腕で防御した反動を利用して後ろへ飛び、再び地を蹴り勢いをつけて襲いかかった。今度は体をよじり、回転をつけ、攻撃を変えて。 「ほれほれ、どうした」  いとも簡単にあしらわれてしまう拳。さらりと躱されてしまう蹴り。そして、ちらりと見えたばあちゃんの顔には笑み。攻撃を変えたことにまったく動じていない。 「くっそうおぉぉぉ」
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