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ユーディー様だ。心配してくれたのだろうか? 僕は早足で近づく。でも彼女は僕の姿を見るなり回れ右をし、女子寮へ駆け込んでしまったのだ。
しまった! 申し訳ないことをしてしまった。周りには東側の貴族様ばかりだった。今度ちゃんと礼を言わなければ。
マーレ様を抱えたまま、星が瞬く藍色の空の下でそう立ち尽くす。
間に合った夕食を摂っていると背後で咳払いが聞こえ、隣に銀髪のリリーが腰かけてきた。
ジト目で見つめてくるその視線に、フォークで小間切れ肉を運ぼうとしていた手が止まる。
「怒っている?」
「まあまあ怒っているかも。まさかわたしのことを疑っていたとはね」
「だって僕ばかり迷惑をかけているのに、リリーは自分の悩みをなにも見せないから」
「見せたところで、と思っていたのよ。でも、まさか王都に乗り込むなんてね。呆れて怒る気も薄れたわ」
そう言って僕の頬を思いっきり抓ってくる。薄れたというのはウソだと思う。
「痛いよリリー」
「で、マーレ様のことはちゃんとしたのでしょうね?」
「え? わかっていたの? 校則違反を申し出るって」
「当り前でしょう。言ったじゃない。マルセーヌ様は頑なだって」
さすがリリーだ。お見通しだ。
僕はマーレ様と仲直りの話をする。
「まさかマーレ様が言い出すとは思わなかったわ。てっきりマルセーヌ様が言い出すのかと」
「僕は頭の中が大混乱したよ」
「でも、ギルは相変わらず甘いわ」
もう聞き慣れてしまった言葉だ。なにか罰を与えるべきだったと呆れているリリーにはにかむ。
そして、ちょっと間を開けて彼女は大息をつくと静かに口を開いた。
「ありがとうねギル」
「え?」
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