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「あら。聖女のわたくしも白眼は人だと、十分に広めていますよ。力不足なのでしょうか?」
「決してそのようなことは」
聖女様が少し拗ねた口調で言うと側仕えたちは慌ててご機嫌を取り始めた。焦りを見せる彼女たちを見て、からかう聖女様はくすくすと笑いだす。その和やかな雰囲気は、本当の姉妹のように仲がいいと思う。
一通り話が終わると、夕食の準備が出来るまでに、僕はお姉様と話をするために席を立った。
太い円柱の中にある狭い階段を降り、聖女様の屋敷を出て中庭を進み、向かいにあるお姉様の館のドアをノックした。現れたのはヴェールを被ったお姉様で、桃色の髪のお姉様か、白い髪のお姉様と話がしたいと告げると館を通してくれた。
館は聖女様の屋敷とは違いフカフカの絨毯が敷かれていて、目の前には大きな階段が目につく。マーレ様の豪邸に似た感じがした。
一階の広間に通され、大きなテーブル席に座って待つようにという仕草を見せられ、僕は椅子に腰かけた。しばらく待っていると、三つ網をした桃色の髪、長い白い髪のお姉様、二人が姿を見せた。
「突然訪問して申し訳ございません」
「いや、尋ねてきていたことは知っていたから問題ない」
立ち上がって挨拶した僕に、桃色の髪お姉様が快くそう返事をしてくれる。
「それでなにか用があると」
僕は頷くと、テーブルを隔てて座るお姉様を見届け腰を下ろした。
昔、聖女様の屋敷に通されたことのある人物がシャマルさんなのかを確かめるために、ここへ来たことを話す。すると目の前の二人は顔を見合わせ、ゆっくりと首を振った。
「そのことについて答えることは出来ません。ギル様」
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