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と、白い髪のお姉様が言う。
「ここへ通された人のことは誰にも話すことが出来ないのですよ。その意味はわかってもらえると思いますが」
あ! と僕は理解し、頷いた。
そう。その人物は屋敷を見、前聖女様と会って領地で暮らしているのだ。つまり、その人物を特定されるようなことを話してしまうと、危険に晒される恐れがあるということだ。
「ギル様のことは信じていますが、それでも簡単に話すことは出来ません」
「いえ。僕が迂闊でした」
そう納得する。
「しかし、あの絵画の差出人を割り出すとは」
「まだ確定していませんが」
鍵はシャマルさんだと思う。彼女はどうして聖女様の館の内情を知っていたのか? こうなると直接本人に確かめるしかない。
腕を組んで関心を見せる桃色のお姉様にはにかんで誤魔化す。
一先ず、絵画とシャマルさんのことはおいておき、もう一つの疑問を話し続ける。
「お二人は、暗部部隊という人たちのことを知っていますか?」
「暗部?」
首を傾げる二人に、エザベルさんから聞いた話をする。
使命や命令のためなら命も省みない特殊部隊。まるで彼女たちが聖女様の側仕えに教えている拳術がそのように見えると。
「つまりワタシたちが暗部部隊の者だと?」
誤解だと、神妙な面持ちの桃色の髪のお姉様に手を振る。
「そういうつもりでは……ただなにか繋がりがあるのかと」
僕の慌てぶりに白い髪のお姉様がくすくすと笑いだした。
「繋がりがあると思っている時点で、わたくしたちを暗部だと疑っているのではないのでしょうか? ギル様」
「いえ。本当にそういう訳ではなくて。ただ――」
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