94人が本棚に入れています
本棚に追加
「妹たちに教えるワタシの拳術が、よほど気に食わないようだな。ギルは」
うっ!
言葉に詰まる。悪い言い方をすればその通りなのだけれど、ただもっと違う戦い方、というか、やり方があるのでは、と思っているだけなのだ。
戦う前から『命を捨ててまで』という考え方が納得できないのだ。その選択は最終手段でもいいのではないのだろうか。
相変わらず僕とお姉様との会話は平行線を辿る。
「まあしかし、その心配なら少し改善されてきているぞ。最近、妹たちはギルに教わった武術が染みついてきたのか、拳術に変化が起こっている。彼女たちは無意識に防御が備わってしまったようだ」
「え! そうなんですか?」
「嬉しそうだな」
訝しい目で指摘され、緩んだ口の端を整える。
「そのことも含め、ギル、君が来るたびに何十年と継がれてきたものがいろいろと変化をもたらす。いいことなのか、どうかはわからないが、君の訪問は本当に飽きさせないな。実に興味深い。次の訪問も楽しみにしているぞ。今日も楽しい話し合いだったよ」
微笑を浮かべ立ち上がったお姉様が手を差し伸べてきた。
「あまり期待されても」
そう彼女の手を取った――とその時、ん? と眉根が寄った。
「どうかしたのか?」
「い、いえ。話を聞いて頂きありがとうございました」
そう礼を言うと、白い髪のお姉様が話に割り込んできた。
「でもギル様。暗部部隊の話はあまり持ちかけるものではありませんよ」
「どういうことでしょう?」
最初のコメントを投稿しよう!