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「暗部というからには、秘密裏に動く者たちのことだと思います。それを指摘し、もし、わたくしたちが暗部部隊だったなら、ギル様を警戒いたします。もしくは、見破られたからには口封じをも厭わないかもいたしませんよ」
ギョッとして微笑む彼女へ目を向けた。
お姉様の言う通りだ。口元をくすりと緩めるお姉様に血の気が引いた。
「肝に銘じます」
と笑い返すことが出来なかった。
二人に見送られ、お姉様の屋敷を出て聖女様の館に戻ると、握手を交わした右手のひらを見つめてみる。
桃色の髪のお姉様の手を握った時の感触。それに覚えがあったのだ。そう。彼女がしていた白い手袋。それが、ばあちゃんの形見の手袋と同じ感触がしたのだ。
魔獣の毛は剣や魔術で傷つきにくく、貴重なものだ。しかも白い毛をもつ魔獣は少ないので更に重宝されていると、旅商人のビルディードさんから聞いたことがある。そんなものを大聖堂の人が持っているなんて。お金はどこから? しかも、ばあちゃん以外で手袋にして扱っているお姉様は一体――
「ギル様? どうかなされましたか?」
館の扉の前で手を考え込んでいると声をかけられ、螺旋階段から降りてきた朱色の髪の側仕えに目を向ける。どうやら夜の食事の準備が整ったので呼びに来てくれたらしい。
「インゼ様と連絡がついたようです。明日の午前中に迎えに来てくださるとのことです」
「そうですか。ありがとうございます」
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