94人が本棚に入れています
本棚に追加
そう笑みを取り繕い、彼女とともに二階へと向かう。その最中、彼女がしている白い手袋が気になった。稽古の時は気にはしていなかったけれど、彼女たちの手袋ももしかすると――なんらかの形で手袋に触れないだろうか? そう思いつつ、食堂へ足を踏み入れた。
静かに始まった食事だったけれど、聖女様が再び外の話を訊ねて来たのをきっかけに話が盛り上がった。
初めは馬のことだった。大きくて速い。館にいる聖女様と側仕えの認識はそんなものだったけれど、実物を見たことがないらしく、彼女たちの中で一番背の高いグレーの側仕えを基準に質問されたので、僕は目を丸くして驚くとともに噴き出し、笑ってしまった。
「彼女の二倍以上はありますよ」
そう馬について語ると、彼女たちが唖然と言葉を失くしたのを見て、再び笑ってしまった。
それから動物の話が続いた。そして、ウィードルドでの狩りについて話すと、彼女たちは興味津々と釘付けになった。
特に川魚を取りに行った時の話では、すごく驚いていた。なぜなら、領地の青年の中では最強と呼ばれるリリーが苦戦をしたのだから。
銛で魚を突いて仕留めるのだけれど――川に足を進め、魚たちが大人しくなるまでジッと待つことが出来ず動いてしまうので、リリーは一匹も取ることが出来なかったのだ。自分一人だけ取れないと苛立ちを見せる彼女は、魚たちにバカにされているように見え、可笑しくてエザベルさんと大笑いしたものだ。
「領地で名高いリリー姫様が手こずるなんて、よほど大きい魚だったのでしょう」
「いえ、こんなものですよ」
最初のコメントを投稿しよう!