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133話 よくある 夏の終わり
翌朝、側仕えたちの朝の訓練より早めに中庭に出て、ルカと考えた新しい構えのトレーニングをしていた。身体を解し、まずはいつものように、イメージしたじいちゃんやばあちゃんを相手に。それが終わるとじいちゃんが見せてくれた『極意』を思い出してみる。
斬りたいものを見据え、剣を振り下ろす。その動きは迷うことなく、素早く、まっすぐに。すると、二メートルほど離れた木の枝が切れて地に落ちていた。
初めて見た時はなにが起こったのかわからなかったけれど、摩訶不思議な光景に興奮したものだ。
瞼を閉じたまま構えると腕を上げ、剣を握ったイメージした腕を振り下ろす。単純な動作なのになぜかしっくりこない。思っていたものと違う気がして頭を捻った。
やっぱり本物の剣を握らないとダメなのかな? 重さや大きさなども関係があるのだろうか?
体に溜まった熱を出すように息を吐きだし、瞼を開ける。
「なにをなさっているのですか? ギル様」
その声に思わず驚いた。すぐ傍に側仕えたちが集まっていたのだ。
「今のは見たことのない打撃のようでしたが」
キョトンとしている側仕えたちは仮想の剣を振り下ろした動きを、違った解釈をしたようだ。失敗したところを見られてしまい、ちょっと恥ずかしい。照れ隠ししながら『極意』の話をする。
「風で斬るのですか?」
そう驚いた側仕えたちはどんな想像をしているのかわからないけれど、瞳を輝かせ、僕の話に好奇心がむき出しになっているのが見て取れる。
「ギル様に教わった型を練習し続ければ、いずれわたくしたちにも出来るのでしょうか?」
「ど、どうでしょう? まだ僕も練習段階なので」
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