94人が本棚に入れています
本棚に追加
興奮気味の彼女たちにそう言い聞かせ、ふとあることを思い出した。
「すみません。どなたか腕に仕込んであるナイフを貸してもらえないでしょうか?」
ハテナとなる彼女たちの腕を見る。剣とまではいかないけれど、なにか手にしてやってみれば、なにか掴めるかもしれない。
朱色の髪の側仕えから借りたナイフを手に、もう一度構えてナイフを振り下ろしてみる。
でもやはりなにも変わらない。遠くのものを斬るどころか風すら起こらない。
やはり剣とナイフの違いなのだろうか? そう悩んでいると、周りにいた側仕えたちがナイフを手に振り回し始めた。
「お前たちは一体なにをしているのだ?」
そう現れたのは、桃色の髪で三つ編みをしているお姉様だった。
訝しい顔をしているお姉様に、手の空いている朱色の髪の側仕えがこの状況を説明し始める。
「風で――なるほど。古い文献でそのような技が出来る騎士がいたと読んだことがあったな」
「本当ですか? その本はどこに?」
じいちゃん以外にも、そんなことが出来る人がいたなんて驚きだ。ぜひ、その本を読んでみたい。
「確か書庫に……しかし、技の使い方などは載っていないぞ」
「どういうことですか?」
技の扱い方が一番重要なのに。なぜ、そのことが書き記されていないのだろう。
「そういった使い手は、自らあみ出した技だからな。後世に残すのではなく、己だけのものに留めたいのだろう。技が出来る証明だけを残し、あとは自らあみ出せということなのだろう。苦労も修行ということだな」
確かにじいちゃんも技を見せてくれたけれど、使い方は教えてくれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!