133話 よくある 夏の終わり

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 そう。面積の狭い手刀では、何度振っても風を感じなかったのだ。 「手のひらより幅の狭い剣やナイフを振って、一体どうやって風を起こすのだ?」  根本的な問題が発生したのだ。  更に―― 「ギルはその『極意』を見たと言うが、風をどうやって見たと言うのだ?」  お姉様が手のひらで仰ぐ仕草を見せ、風を起こしたけれど、僕も側仕えも風が見えなかった、  でも、僕はじいちゃんやアルギニオさんが『極意』の技を見せてくれた時、確かに風が見えたのだ。それに、そもそも僕の風の魔術は、じいちゃんの技を見たから使えるようになったのだ。  手のひらに『円』を出し、風の魔術について話した。  僕には手のひらの魔術は見える。だけど、お姉様や側仕えたちには見えていなかった。  風の魔術に触れようとしたお姉様を「指が切れます」と制し、側仕えに土を手のひらに振りかけてもらった。すると砂が四方八方へ飛び散り、手のひらに風が起こっていることを納得させた。  魔術と『極意』の風が見えるのに、なぜ自然の風が見えない。  僕たちはこの二つの疑問に、ずっと頭を悩ませていた。  この疑問がおそらくカギだろう。でも、答えが出ず、頭の中の脳みそが痒くなり、髪を掻き毟る。側仕えたちも同じ気持ちらしく、歯痒そうな顔をしていた。 「ギルが来ると妹たちがどんどん変わっていくわ」  と、聖女様はお姉様と同じことを言いながら呆れる。  しかし、風の話しを聞いた聖女様とグレーの髪の側仕えも加わり、インゼさんが到着するまでの間、『極意』の風について議論が続いたのだった。 「ギル。なにかわかれば、すぐに連絡をください」 「はい」
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