66話 よくある 物語の始まり

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 もし、聖女様からものが贈られてきたり、託があったりした場合は重要案件として、ひっそりと行わなければいけないらしい。  誰もいなくなった会議室でゴクリと固唾を呑む。  緊張しながら丁寧に布を取ってみれば白い木箱が現れた。蓋には太陽が想像できそうな、金色の円の中心から、いくつもの線が描かれている印みたいなものがある。そして気になる箱の中身は、小さな一輪の花が添えられた便箋だった。  便箋を手に取り目を通す。小難しい言葉でまず挨拶が書かれていた。次に、近々話がしたいため大聖堂を尋ねてほしいと。最後に突然の手紙についてのお詫びが書かれていた。  読み終わった便箋を丁重に折りたたみ、箱の中へと入れると立ち上がってドアを開け、退席した二人に声をかける。 「ワタシたちはなにも訊かない。ギル、贈り物のその指示に従うように」  エルゼ女史が神妙な面持ちで言うが、僕はあっさりと箱の中身について話す。 「内容に関しては、聖女様から話しても構わないと書かれていました。僕がウィードルド出身だということを知っているようで、今後の対応を相談してもいいとのことです」  と、近々大聖堂へ行かなければならないことを伝えた。すると、二人の顔が引きつる。  聖女様と面会! そう驚く表情を見せて。  マックドルガ神官長が一つ咳払いをするとエルゼ女史に指示を与える。 「すぐに彼の休学処置を。あと、魔術の解禁を」 「はい」  え? 僕は慌ただしくなる二人に目を瞬かせた。
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