1人が本棚に入れています
本棚に追加
※※※
「相変わらずつまらなそうに仕事してるねぇ~、北代くん」
店のバックルームで昼食を取っていると、茉里さんが話しかけてきた。片手間でスマホゲームに集中していたから、少し面倒だなと思った。
「そう見えますか」
「うん」
「まあ、所詮バイトなんてみんなそうでしょ。働かずに金が手に入るなら働かないし」
そもそも高校生だし。
「五十万だっけー? バイクの修理代」
茉里さんは煽るようにいう。
「高校生で五十万は辛いなあ。――やっぱ、悪いことはするもんじゃないねぇ」
他人事のようだった。いや実際、他人事なのだけど。
一ヶ月前、俺はバイク事故を起こした。連れのバイクを借りて乗っていたのだ。
無免許運転だった。運が良かったのは、夜間の単独事故だったことだろう。目撃者もいなかったので、補導されることもなく、バイク自体も一応無事だった。ただ当然ながら保険は使えず、修理費用は俺が持つことになった。
そこに不満はない。自分がやったのだから、仕方がない。こんなとき、家が裕福ならといつも考えてしまうが、残念ながら家は母と妹と三人の母子家庭で、経済状況は壊滅的に悪い。
当たり前だが、母親は激怒。それは想定できたことで、修理代を捻出するために、必然的に俺はバイトをすることになった。
最初のコメントを投稿しよう!