第1章 アオハル

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 合宿が終わってからは、すぐに初めての中間テストだった。またしても一喜一憂する時間も与えられずに、球技大会、期末テストへと続く。   そしてこの高校では夏休み前に、伝統行事のクラス対抗合唱大会があり、その1ヶ月くらい前から練習が始まる。つまり球技大会が終わると同時に、練習が始まるのだ。私は伴奏者になった。5歳の頃からピアノを習っていて、小学3年生の頃からずっとピアノで伴奏をしない年はなかった。今年はそのことを知らない人達ばかりなのでないと思っていたが、担任から指名されて、私は運良くこの大役を手に入れた。放課後の各パートの練習に付き合うことで、日頃あまり話したことのないクラスメートとの話す機会を増やしていった。女子とは入学後直ぐの合宿をきっかけにすぐに話す機会を得たけれど、男子はほとんどの人と話したことがなかったから、大変ではあるけれども話せる機会を得て、ここ最近はこのクラスが楽しくて愛しくて仕方がない、という気持ちになっている。  今日はテノールのパートの音取り練習だ。昨日のバスのパートに続く音取り練習だったが、昨日よりはずっとやりにくい。テノールには音楽の得意な人がいないように感じる。そのせいかみんなやる気もなくて雑談が多い。そして何よりもとにかく、そう、何だか不安定・・・。『それでなくても音がとりにくいパートなのにどうしよう?』『繰り返しやっているのに上手くならないのはどうしたらいい?』と、指揮者の子と私が少し困り始めた時だった。キーボードを囲む右端の方から声がした。
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