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一方、この休みのおかげで彼との距離は開いた気がしている。そう思うのは、休み中話さなかったことに加えて、休み明けから、彼のもとに他クラスの部活の仲間がやってきて、楽しそうに話しているのを目にすることが多くなったからかもしれない。そして、彼が部活の中心的な存在になっていることに私が気がついたからなのかもしれない。楽しそうに笑う横顔に目を奪われながらも寂しさは確実に増していく。
だからなのか私は彼に話しかけることが出来ずにいる。夏休みが明けてからは一度もまだ話をしていない。そう、言葉を交わせていないどころではなく、視線すら合わなくなっているのも分かっている。教室でクラスメートと戯れているダイチくんの中から、私は完全に消え去ってしまっているかのようだった。『アキ、お疲れ!って言ってたじゃん』と私の心が叫ぶ。もはや今の私には焦りだけしかなくて、文化祭に期待するのも致し方無い状況だった。
そして、ついに待ちに待ったその日は訪れた。初めて経験する高校の文化祭は中学校の文化祭とはまるで違っていた。生徒主導だからなのだろうか。遅くまでの準備も楽しくて、みんな一生懸命で、笑い合っていた。当日の催し物にはサエと一緒に行動した。バンドも劇も、お店もお化け屋敷もゲームも、華やかでリアルで面白くて、何よりも楽しかった。
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