第1章 アオハル

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訊ねた彼への返答に焦って困った私は、 「文化祭の思い出に。」 と、よく意味の分からない事を答えていた。視線を向けていたクラスメートの二人は、 「やるやん、ダイチ。」 「2人って、付き合っていたっけ?」 と、冷やかしを言った。そう言われてどこか嬉しい気持ちになっている私とは違って、対照的な困り顔の彼はやや怒った感じで冷やかし組に言葉を吐いた。 「違うって!」 彼らに言うと、彼は私の方に向き直して、 「撮るんなら早く!」 と、耳の辺りがほんのりと染まった横顔で目を逸らして言った。  私と一緒にいた友達のサエが、気を利かせたサプライズを私にくれる。 「あ、私撮ってあげるから一緒に写ったら。」 「あ、ありがとう。お願い。」 と、私が恥ずかしげにサエにお願いして、教室の前黒板をバックに写真を撮るために移動した。ちょっと怒り顔の彼は、 「早く!」 と再度言い、撮り終わるや否や、 「もういい?」 と言って、その場を去ろうとした。 「ダイチくん、ありがと。」 と後ろから声をかける私を振り返ることなく、彼は無言で友達を残して教室の前扉から出ていってしまった。
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