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入学式当日、巨大な昇降口前に貼り出されたクラス分け表でお互いの名前を探した。もしも自分の名前がなかったらどうしよう、という不安を抱きながら探すと、やはり彼女とは別々のクラスになってしまっていた。彼女は「1−8」で、私は「1−6」だと分かり、
「割と近いね。」
「良かったね。頑張ろうね。」
「お互い頑張ろう。」
と声を掛け合い喜び合った。
昇降口で慣れない雰囲気の中、外靴をスリッパに履き替えた。この校内で履く色気のないダサいスリッパも伝統なのだろうと仕方なく履いた。そしてその時、私たちは初めて気付いた。二人の教室の間にはクラス分け表が張り出された、まさに今靴を履き替えた3学年が使用する巨大な昇降口がドンと位置取っていた。ちょっと話に行くのも面倒くさい程の距離だということを知り、唖然としてしまった。
私の名前はアキ。「1ー6」と書かれた教室に不慣れと怖さを隠して、安定しない足どりで向かう。自分が気づかないふりをしている不安と期待が私の胸の奥を静かに掻き毟る。無意識に肩に力が入っているようで呼吸が浅いと感じる。教室前の扉に貼り出された名簿をもう一度見て、自分の名前を確認した。深呼吸。やはり見る限り、誰一人知らない教室だった。『でもある意味、今までの自分を一から塗り替えて、新たに始めることが出来るチャンスかもしれない』と考えている自分がここにいた。そして『もはや、いっその事、このキャラも変えてしまおうか・・・』と。
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