第1章 アオハル

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 部活をしていない子たちも皆余る時間がないと口々に言い、私の思い描いていた”下校時にはみんなで恋話(こいばな)!”にはならなかった。休み時間限定の恋話を楽しむ教室の傍にはそんな時間さえも惜しんで、勉強に時間を割いている子たちがいることに驚かされた。しかし、その光景を冷ややかな目で見ている私は志望大学への進学の大変さなど知る由もなく、この時、後に突きつけられる現実を思い知ることになるとは思ってもみなかった。  そんな状況にいるにも関わらず、私は高校生活を満喫したくて堪らなくて、今は何よりも恋がしたくて堪らなくなっている。多くの人は恋をすると勉強に身が入らないというけれど、私は恋愛をしていないと何事にも活力の湧かないタイプだ。恋をするとポジティブになって自然と成績も上がっていくお調子者なのは、いつの頃からか自分で知っていた。  入学して1ヶ月が経ち、少なくとも私の思い描いていた高校生活と違うということだけはもう理解しているはずで、少しずつ崩れていく理想と直面している現実の中に私はいる。
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