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【招待:ニルヴ・シュテルノの場合】
「へえ。良さげじゃないか。地元よりも楽しそうだ」
やはり最初にこの人を選んで正解だった。ニルヴは快く受け入れてくれた。
「一応断っておくけど、私が一緒に行くのは無理よ。先にお手伝いさせられるから。はっきり言ってめちゃくちゃ嫌なんだけど」
「そう言うなって。エンゼルのことは皆が期待してるってことでいいじゃないか。こういう家庭の面でもね」
その期待が重いのだ。そもそもエンゼルがアイリアの存在を救いに感じる理由は、こんな相手が居るなら、期待に十分応えられなくても満足だと、そう感じさせてくれるからである。つまり期待を気にしないことを許された気になったからである。
だからこそここで改めて期待というものをぶつけられると、非常に重い。正直なところ、エンゼルは期待から逃げようと何度か思っていた。
「期待に応えることは、美徳じゃないの」
「そうかなあ。まあ、エンゼルは僕と生きる世界がだいぶ違うっていうのは前から分かってるけどさ」
生きる世界、か。
自分の生きる世界に嫌悪感を抱くという現象は、時折見られるものだ。世界への憎悪を抱く人間は、基本的に自分の世界にだけ向いており、よって他者の世界に留まっての説得は困難である。
エンゼルも、その口だった。
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