Eins:Einladung

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「無理に私の気持ちを分かったフリをしてるよりは、そういう態度の方がなんか好感持てるわ。まあ贅沢な悩みってのはちゃんとした悩みなのよ。人の悩みは贅沢か切実かに限らず全て平等」 「そういうことかもね。だから、僕はその思いをしっかり受け止めよう。受け止めるだけで、何ができるでもないけど」  とことん正直だ。逆に嫌な気分になりそうである。媚びのような、そんな嫌らしさを感じざるを得ない。 「ところでどうだったの? 本当のところの予定は」 「予定はまだ入ってなかったからちょうど良かったよ。というか君の家は予定が決まるのが早い。今いつだと思ってるんだい」 「え? もう12月に入ったんだから、年末に備える季節じゃない」  ニルヴは、先程の自分の言葉を改めて思い出していた。生きる世界が違う。こういう点でも、その言葉が生きるものかと彼は感心していた。  自分の言ったことは何かに回収される必然的法則があるのかもしれない。そう思えていた。未来視を使ったわけでもないのでそこは定かではないが、自分という存在は未来への指向性を持つようだと、考えてみていた。 「なるほど。備えあることはいいことだ。思えば人間、年末気分は本当に年末になってから出てきて、追い詰められていくところから年末が始まる。それは本当はいけないことだったのかも……」 「何言ってんのよ?」
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