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「ああいや、伝わらないならいい。とにかく、ありがとね。楽しみにしておこう」
「そ。ああ、それと、お願いがあるんだけど」
別れの挨拶のようなつもりでニルヴは言ったのだが、エンゼルの呼び止めに引き止められる。どこか申し訳無さげな表情でニルヴはエンゼルに背を向けたばかりの体を再び回した。
「……なんか、調子狂わせちゃったかしら。まあいいわ。あの結構言いづらいことなんだけど……父さんの前では、思いっきり彼氏みたいな振る舞いしてほしいなって」
「急にどうしたのさ。実際になるならともかく、父親の前だけそういうフリしろってどういうことだい?」
こう言って揺さぶってみると、女の子の本心は見えるのではないか。そう思って聞いてみたが、その答えで顔を赤らめたり、まして口ごもるでもなく、いつも通りのキツめの表情で何か思うところも無さそうな返しをしたエンゼルにはそういう気は無いと見えた。
「そりゃあ父さんをちょっと調子乗せたいからよ。娘に彼氏が出来たっぽければちょっと父親は緩む……はずよ。父さんはそうしないと何か皆と私を引き離すことに躍起になりそうで怖くて。でも直接そう言うのはNGね」
「あー、そういう。わかった。お堅い人なんだね。よし、そうしよう。それじゃ!」
ニルヴとエンゼルは、それぞれの行き先へと向かった。
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