Eins:Einladung

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「母さん、迷惑かけていません? 私の前でなくても、人にベタベタしますかね?」 「ベタベタは流石に。ただ言動がネチネチしててしょうがない」  黒先生(シュヴァルツシルト)自身は、こんなことは簡単に言わない。本人の、娘の前だから言える。しかもちょうどの。 「なんか分かりますね。ベットリへばりついてくるような? まあ人間としては親としての姿よりかはマシでよかったです。あのクソ親も場をわきまえられるのですね」 「遠慮が無さすぎるぞ。あまり直接的にクソ親なんて言うもんじゃあないだろう」  そうは言ってもやはり言動の問題は大きいか。ちゃんとそういう人だと理解しているのなら問題はなかろうが、問題は初対面の人と会話する際のこと。社会への適合性は薄いか。間違いなく母親ほどではないにしろ。  人格とは、形成過程を基準にすれば大きく二つに分かれる。類似と反動である。エンゼルの人格でピックアップされる部分は、多くが反動で形成されたものだ。自由への愛、癇癪、その根にある実直さは、抑圧や異質な家庭環境の反動で生じている。  しかしながら、言動や素行の不良に関しては、一番目立った部分にして、母親に似た部分であった。一番大事なところで、やはり子とは親に似るものなのである。
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