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「どーしたの、エンゼル? 窓なんか見てずーっとボーッとして……」
寮の自室。友と二人だけの時間。エンゼルは夕暮れの東の空を、ずっと見つめていた。
「実家、確かあっちの方だったかなあ、ってね……そろそろ帰ってこいとか、言われるのかしら、とか」
エンゼルの声はどこか無気力な感じだ。全身の力を抜いて、リラックスしている。
決して実家が嫌いなわけではない。こうして高いところから眺めているとむしろ落ち着く。結局のところ、心はそこまであの環境を嫌ってはいないらしい。
「もうそういう季節だもんね。あたしはそんなに帰る気ないけど。えへへ」
「あら、どうして? 親御さん悲しまない?」
「別にー? むしろうちのパパとママは色んなとこ遊びに行けとか言うと思うよー」
やっぱり、家庭環境とか何もかも違うのね……エンゼルは少しばかり、憧れのような感情を抱いていた。
「あっ、そーだ! エンゼルんち、行きたい!」
「ハァ!? 何急に! 言っとくけど、うちってそういうの厳しいのよ? 父さんのプライドとか、色々……」
口ごもって、エンゼルはアイリアの表情を伺う。にっこりと微笑んだまま。首をかしげている。んー? という声を出している。妙に可愛らしいのが腹立つ。
エンゼルは、とにかくダメ、と言おうとする。しかし、予想外のものに、阻まれることになった。
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