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「父さんって……ゴリ押しでなんとかなる人だったのね」
「嫁が為せるワザってやつよぉ。娘が為せるかは分かんないけど。とにかく、私はそれを推奨してるから。なんとなくだけど、感じるの。エンゼルは前よりイキイキしてる」
そうかもしれない。色々な形で感情表現をするようにはなった。過去を思い起こしてみれば、ずっとエンゼルには虚無感があったのだろう。
あんな風にお高くまとまった奴らは、そうあることで満足していただろう。自分で勝ち取ったような気にすらなっていたのかもしれない。だがエンゼルは知っている。
ここに至るまでに触れてきた友人達は、かじりついているだけ。恵まれた者は、その恵みを突き放す力を最初からつけてはいない。自分に乗っているものを突き放せないのは、自由の謳歌に足らない。
だからこそ、一歩踏み出せたこと、目の前に多様な自由が広がっていることが、心地よいのだろう。
「で、どお? 引き受けてくれる?」
「いっつも私が嫌がって押し付けるのが定番だったでしょ。だからとりあえずお断りするわ」
「そう。それじゃ押し付けとくわねぇ。よろしくねー」
この流れ。安心感がある。こうでないと、ダメなのかもしれない。
やはりトイフェルの家柄には少なからず依存している。自己矛盾がそこにはある。
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